節税対策の検討(共同住宅建設計画)と実施
① 共同住宅建替えの有効性
・被相続人名義の土地を多く所有されている場合、更地だと相続税評価額が大変高い状態(貸家建付地の1.5~2倍)で相続が発生することになります。 また、自宅以外にアパートやマンションを所有・運営されている場合でも、築年数が高い建物を相続財産にすると、残された相続人が大変苦労することになります。 できれば築年数の古いものは借入れによる資金調達で建替え、相続評価額の圧縮を図ることが有効です。
▼「共同住宅建替えの有効性」② 共同住宅事業計画書の作成
・コンサルタントと相談して起用した建築士に依頼して、相続の対象となる土地(建設地)にどのくらいの規模の建物が建てられるかを検証し、 そのコストを概算で試算します。それに基づき、事業計画収支表を作成します。
▼「共同住宅事業計画書」③ 銀行借入折衝手法と予備承認
・資産家の場合、取引銀行が数行あるのが通常ですが、昔より金利競争が激しくなっていますので、 取引銀行以外にでも借り入れ条件(金利や担保設定、推定相続人全員の合意が必要か否かなど)を比較と確認をすることが大切です。 ・事業開始前に、共同住宅建設資金借入れが可能かどうかを確認することは必須です。
▼「銀行借入折衝・実行」④ 建設業者の候補選定と決定
・建物の品質を保持しコストを下げるという、この事業の中で最もハードルが高く、 施主側の立場に立ったコンサルティングが必要な重要局面で以下にポイントを述べます。 第一に、候補業者の選定です。まず、共同住宅建設実績が豊富であること、そして、その業者の財務内容が健全であること、 また、担当者のレベルが高く、センスが良いことなどによって候補業者を2~3社に絞り込みます。 この時点で建築士に基本プランを作成させ、候補業者に、建物の規模や設計コンセプトを詳細に説明し、仕様と相見積もりを取ります。 各社の仕様書と見積書が出そろった段階で、業者の選定を行います。
▼「建設業者選定基準」⑤ 請負契約締結、施工監理体制
・最終決定した建設業者と、建築基本設計及び工程等に関して最終協議を行い、 構造体強度や仕様(外装・内装スペック、設備機器・照明・空調等のメーカー選定など)について構造・仕様書を作成します。 この段階で工事費用を確定して「建築請負契約」を締結します。
▼「請負契約と施工監理」⑥ 建物建築時の施主側アクション
・ 施工開始前に、近隣へのあいさつと建物調査を実施します。 ・ 次に、建物解体後に行われる地盤本調査です。解体前の調査ではっきりしなかった地盤の強度を本格調査します。 ・着工時に、設計図と実際の敷地上の建物建設位置が正確であることを確認しておくと安心です(実際は、ズレているようなことはほとんどありません)。 また、上棟時に新築建物のスケール(全体観)を目視確認し、写真撮影しておくとよいと思います。 ・建築中の建物の出来高チェックは、建築会社からの施工報告書を、施主側の建築士に確認させることをお勧めします。 ・壁・床・天井の施工が終りに近づいた段階で、建物の壁からの音や上下階の振動を確認します。 竣工間近の段階で、施主側による竣工予備検査をしておくとよいでしょう。 ・施工完了直前に、所轄役所の建築部門、または民間建築確認代行機関による建物竣工検査が行われます。 また、同時期に、消防署による建物防火設備等の検査が行われます。 ・竣工に伴い、役所側から「確認検査済証」が付与されます。この時点で建築業者等の施工業者に、追加工事を含む残金の支払いを行い、 本件建物の最終引き渡しを受けます。
▼「建物建築時の施主対応」公正証書遺言の内容(参考例)
任意後見制度とは
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任意後見制度とは、本人が意思能力を有している間に、将来、自分の判断能力が不十分になったとき、後を任せたい人(任意後見人)を、 自らの意思で先に決めておく制度です。任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するだけとなります。 この制度を済ませておくと、将来本人が認知症になったときに、家庭裁判所に申立てをして「任意後見監督人の選任」をしてもらうことが出来ます。 この場合、任意後見監督人は、任意後見人が適正に業務を執行しているかを、確認しますが、通常、任意後見人は3カ月に1回程度、「任意後見報告書」で、任意後見監督人に報告します。 また、任意後見制度の適用を受けた時点で、任意後見人に、財産運用に関して代理権を与えておく方法もあります。
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この制度を確実に運用するためには、公正証書にしておくことが必要です。本人と任意後見人が公証役場で手続しますが、 通常の場合は、相談した弁護士にコーディネートしてもらう方が確実で、本人が外出できないよう場合でも、公証人が出張して、 自宅(又は病院など本人のいるところ)まで来ることもできます。
共同住宅建替えの有効性
古い建物は入居率が次第に下がり、修繕費も徐々に高くなります。 ちなみに、そのままにしておいて、相続税を支払った後に相続人が建替えを行った場合、節税効果は大幅 に低下してしまうことになります。
共同住宅事業計画書の作成
当初の建設費やその他の経費、公租公課を初期費用として計上するほか、毎年の支出想定額を試算して、20年程度のキャッシュフロー表を作成します。 これにより、賃貸事業が長期安定運営できるかを判定します。 ・この資料は、事業の成否や建設費を確認する以外に銀行に提出するローン審査資料となるため、保守的に作成する必要があります。
「賃貸住宅建築計画 概算収支一覧表(参考)」銀行借入れ折衝から融資実行まで
・銀行に相談し、予備審査に必要な資料(財産目録・事業計画書・登記簿謄本その他)を提示し、 実際の建設費(概算見積)に対してどの程度借入れ可能かを確認します。銀行によって審査方法は異なりますが、 堅実性が高い場合、予備的承認を得られます。その後、正式見積書と工程表、最終事業計画書を銀行に提示します。 銀行融資内定後、最終的なローン実行には、建物の建築確認が下付され、「金銭消費貸借契約」を締結することが条件となります。
建設業者の選定と決定
・選定基準は、まず、デザイン性に優れていること、この点は将来、建物が陳腐化しないためにとても重要です。 次に、コ ストと品質が適正であり、大幅な追加コストがかからないかという点です。さらに、工程表に準じた施工が可能かの評価です。 建築士とコンサルタントが「比較表」を作り、施主が決定します。
請負契約締結・施工監理体制
・建設業者側の工事監理体制を確認し、施主側の監理者(コンサルタント・建築士)を加えて工事監理体制を構築します。 建設業者側だけで監理させる方法もありますが、建設の過程で、変更事項や協議事項が発生することが多くありますので、 施主側の立場を優先して対処するためには、施主側の建築士をコンサルタントとして建築会議に参加させることが望ましいと思います。 特に、地盤調査後に、地盤工事を強化するような場合、追加コストの調整などが発生することもあります。そうした場合の専門的調整役として、 施主側の立場に立ったコンサルタントを起用しておくことをお勧めします。
建物建築時の施主対応
・建物調査というのは、既存建物の解体時の振動等によって、近隣の建物に被害が及んだ場合の確認とその保証を担保するためのものです。 費用は1件当たり5万円から7万円かかりますが、保険的な要素と共に、将来の近隣関係を安定的に保つ必要作業です。 ・既存建物解体後の正式地盤調査で、地盤の強度に問題なければ、建物着工に取り掛かれますが、強度が不足している場合、 地盤強化工事が必要となります。そのため、予めしっかりした地盤調査会社に建物解体前調査で、強度を確認しておく ことが大切です。 ・この間、建物実施設計図を完成させ、所轄の区役所(又は民間の建築確認代行機関)に、建築確認申請をします。 この時、ミスがあると長引きますので、建設業者と設計者と施主による最終確認が必要です。 ・建築期間中、工事の遅れがないかや、建築部材が仕様書通りに使用されているかどうかのチェックが大切です。 ・上下左右の騒音や振動は、設計通りに出来上がっていたとしても、木造や軽量鉄骨造等の場合、換気口やダクト等の穴、 また、使用部材の関係で、思った以上の壁越しの話声や、上階の床からの振動が響く場合があります。その場合の対応策として、壁・床・天井の貼り込み前に、 グラスファイバーの追加等を指示することも良策です。(施工上、実際は基準値を上回っていることがほとんどですが、あくまでも安全策とお考えください) ・竣工時にすべて確認をすることは結構大変な作業です。既に完成している部分(例えば、屋根や外壁、窓サッシュ、外壁や門扉など)を早期にチェックしておけば、 万一不具合を発見した場合には、建設業者に指摘して早期に補修させることが可能です。これは工期を遅らせないためにも効果的だと思います。 ・ここでも、建設業者だけではなく、施主側の建築士に立ち会わせておけば、役所等から何か指摘があった場合の対処がスムーズにいくという点で有効だと思います。 ・竣工後、当たり前のことですが、この建築に関係する書類(請負契約書、支払明細書、領収証、協議議事録等)を全て整えておくことをお勧めします。 本件の建築が相続対策である点で、これらの資料は全て将来発生する相続に関係する記録として重要であるためです。