物件調査・リスク管理手法

土地建物資料の整備と調査

A.土地建物資料の整備と調査

 所有している土地について、法務局で登記簿謄本および公図や地積測量図を入手保管することは当然ですが、「実測図」作成による隣地境界の確定と隣接所有者の捺印による同意を得ておくことが重要です。某大手企業で、長期保有している土地に関して、一部未整備であったため、売却時に急きょ実 測図を作成したケースもありました。近隣との境界同意に時間がかかる場合も想定されますので、未整備の場合はできるだけ早期に「実測図」を作成しておくことをお勧めします。
 さらに土地に関しては、有害物質の地中含有の危険性の有無を確認するため、出来れば「土壌汚染調査」をしておくことをお勧めします。

B.建物の資料整備と調査

 建物調査に関しては、やはり法務局で登記簿謄本や建物図面を入手保管するほか、設計図書、許認可資料(建築確認申請書・検査済証など)を基本資料として整理することが必要です。
 また、建築したゼネコン等や専門調査会社に「建物診断(劣化調査)」を依頼し、長期修繕計画を策定し、計画修繕することが、建物の安全性確保と保全にとって重要となります。
 更にオフィス調査として、各階のレイアウト図面を作成して、スペース配分調査や、一人当り使用面積を確認することが、適正なスペース管理やリスク管理上重要となります。本支店のオフィスに無駄がないか(または不足していないか)の判断や、リスク管理面で避難通路の確認、防災設備機器の配置確認資料としても重要な役割を持つからです。
 上記をまとめて「建物調査書」を作成します。

 当社では、上記の資料整備サポートや、レイアウト図作成等の資料整備と諸調査実施サポート業務を専門業者ネットワークにて総合的にコンサルティングしています。

不動産資産のリスク管理手法

 不動産資産のリスクは、土地建物そのものが原因となって生じるリスクと、地震や火災等によるものとがありますが、建物リスクが高いと災害時におけるリスクも高まるため、双方に配慮した総合リスク管理体制を構築することが必要です。

A.耐震診断と施工計画

 昭和56年に建築基準法が改正され、所謂「新耐震設計法」が施行されました。それ以降の建築物は原則として、耐震性が高いと云われております。
 ここでは、昭和56年以前に建築された建物に関して、実際に耐震性に問題があるか否かの調査と対応を説明致します。
 耐震調査には予備調査(設計図書と建物との照合)、第一次診断(建物重量と柱、壁の断面積等で推定する簡易な診断)からスタートします。
ここで数値に問題がある場合、次に第二次診断(柱、壁、コンクリート強度、鉄骨量等から、建物強度・粘り度を推定する診断)更に第三次診断(梁、柱、壁の強度と粘り度を詳細に推定する診断)があります。
 通常、第一次診断で問題があった場合、第二次三次診断で施工方法や範囲を確認して実施計画を作成します。
 工法には、スレーブによる補強、壁による補強、柱捲き(炭素繊維等で柱を強化)によるものが代表的です。

 当社では、耐震診断会社や施工会社の紹介による耐震リスクコンサルティングを致します。

防災マニュアルの策定と予防措置

A.緊急時連絡リストの作成と更新

 緊急時の連絡リスト作成は当然ですが、出来れば半年に1回程度の更新作業をしておくと常に精度が高くなりますのでお勧めします。

B.防災マニュアルの策定

 防災マニュアルはオリジナル作成してもよいのですが、基本は総務省消防庁の「消防庁防災マニュアル」の利用が便利で纏まっていると思います。
 ただし、企業は、独自に災害時の事業継続計画(BCP Business Continuity Plan)を作成して対処しておくことが必要となります。
 主要事業継続のためのデータバックアップや安否確認システム、システムダウン対応の自家発電装置の設置や機密データ漏洩防止対策などが挙げられます。

C.防災訓練(防火・災害・テロ・突発事故等)と緊急訓練

 大企業では消防法に基づく特定建築物に入居しているケースが多いため、定期的な防災訓練がすでに実施されているのですが、中小規模企業では独自の訓練体制整備されていない場合も多くみられます。
 その場合は、消防署が定期的に開催する地域防災訓練に参加することも有意義です。また、所有ビルに関しては、社内責任者が中心となって、管理会社とともに契約している設備会社やシステム会社、電気通信業者と共に定期的な「防災対策協議会」を開催し、具体的な緊急対処時間確認や措置レベルについて「報・連・相」訓練することをお勧めします。

D.オフィス什器転倒防止器具の設置

 物件調査時に、自社オフィスすべてのレイアウトを作成することを提案しましたが、これは什器備品の転倒防止対策にも活用できます。
 作成したレイアウト図に、什器備品の転倒防止器具装着部分を記載しておけば、防災資料として全体の確認が本社で可能となります。(ただし定期的な確認と更新作業が必要です)